いぼ痔について

痔は「日本人の3人に1人が痔持ち」といわれるくらい、皆様に身近な病気となっています。痔のなかでもっとも多く、全体の60~65パーセントを占めるのが痔核(いぼ痔)です。

本ページでは、痔の基本情報と、日本人にもっとも多い「いぼ痔」について症状、原因、治療法をご説明いたします。痔の症状でお悩みの方は、お気軽に肛門科へご相談ください。

痔の基本情報

まずは、痔についての基本的な知識をご紹介いたします。

あなたの痔はどれ?痔の種類

痔は大きく分けて3つ

痔は「日本人の3人に1人が痔持ち」といわれるくらい身近な病気です。痔の症状は大きく3種類に分かれます。どの痔になりやすいかは、便秘やストレス、生活スタイルの違いなどにより人によって異なりますが、近年では男女ともに受診される方が増えています。

痔の種類

いぼ痔 痔の種類

痔核(いぼ痔)

痔核(いぼ痔)

■概要:痔のなかでもっとも多い疾患です。

■主な症状:肛門に負担がかかることで、肛門を閉じる役割をするクッション部分が腫れます。 排便痔の出血、残便感・違和感、肛門から痔核が外へ出てしまうなどの症状が出ます。

痔ろう

痔ろう

■概要:歯状線のくぼみから細菌が入り込み、中で膿がたまります(肛門周囲膿瘍)。肛門周囲膿瘍ができてから痔瘻へと進んでいきます。

■主な症状:肛門周囲膿瘍の場合は、発熱、激しい痛み、腫れが出ます。痔瘻は、膿が出て下着が汚れます。

裂肛(切れ痔)

裂肛(切れ痔)

■概要:硬い便の排泄や下痢によって肛門が切れます。

■主な症状:出血は少量ですが、排便と関連した痛みが出るのが特徴です。

日本人にもっとも多いのは「いぼ痔」

これらの痔のなかでもっとも多く、全体の60~65パーセントを占めるのが痔核(いぼ痔)です。いぼ痔は比較的男性に多く、飲酒や仕事上の過労が原因とみられます。一方、女性のいぼ痔は、妊娠や出産で悪化すると考えられます。裂肛(切れ痔)は便秘が関係しているため、やや女性に多く、痔ろうは男性に多くみられます。

痔は専門医による治療がおすすめです

市販薬では完治は難しい!

痔の症状を認識していても、忙しかったり肛門科は受診しづらいことから、市販薬で症状をおさえている方が多いようです。市販薬では一時的に症状が治まっても完治は難しく、悪化するとまた薬で症状を抑える繰り返しになります。またどの市販薬が症状に合っているかご自身では判断が難しいため、なかなか痔を治すことができません。

症状を見極めるには専門医による診察が不可欠!

痔の症状はさまざまな段階にわかれ、それに応じて治療法も変わります。また痔と似た症状が出ていても、痔ではない肛門の病気が隠れている可能性もあります。自己判断は禁物です。専門医に診察を受けるのがベストです。

痔は早期なら薬やジオン注射で治る方がほとんど!

実はクリニックを受診しても、治療は生活習慣の改善やお薬かジオン注射で済んでしまう方がほとんどです。ですが長い間放っておいて痔が悪化してしまうと、手術が必要になるケースもあります。大切なのは、症状に気づいたら迅速に診察を受けることです。

当院は患者さまへ万全の配慮!

患者様にリラックスして治療を受けていただくため、当院ではさまざまな配慮をしております。当院の入口は併設の内科と一緒になっておりますので、人目を気にせずに院内にお入りいただけます。診察室はもちろん完全個室です。女性の患者様にも「恥ずかしがらずにもっと早く来ればよかった」とおっしゃっていただいておりますので、どうぞ安心してご来院下さい。

いぼ痔の症状と原因

日本人に一番多い「いぼ痔」について、くわしくご説明いたします。

いぼ痔ってどんな痔?

いぼ痔(内痔核)は、肛門にいぼ状の腫れができる痔です。主に排便時のいきみによって肛門部に負荷がかかると、血液循環が悪くなって直腸や肛門にうっ血が生じ、その結果、直腸の血管が腫れていぼのようになります。

いぼ痔には2種類あり、直腸側のクッションが大きくなった内核痔と、肛門部分のクッションが大きくなった外痔核があります。通常いぼ痔というと内痔核を指します。内痔核の場合、痔核が大きくなると、脱肛といって痔核が肛門から脱出するようになります。

2種類のいぼ痔

内痔核 外痔核 2種類のいぼ痔

こんな症状が出たらいぼ痔かもしれません

内痔核は、肛門の内側には痛覚がないので痛みはさほど感じず、排便時の出血や肛門から痔核が脱出して気づくケースがほとんどです。内痔核の場合、以下のような症状がみられます。

  • 排便のときに真っ赤な血がぽたぽた垂れる
  • 真っ赤な血がトイレットペーパーにつく
  • 粘液や便が付着して下着が汚れる
  • 便が残っている感じがする
  • 肛門に違和感がある
  • 肛門から脱出している組織があるが、自然に戻る
  • 肛門から脱出している組織があり、指で押さないと戻らない

外痔核は、出血は少ないですが腫れて激しく痛みます。どちらにせよ自己判断ではなく、症状を感じたら早めに専門医による診察を受けましょう。

気になるいぼ痔の原因って?

内痔核、外痔核どちらの場合も肛門に負担がかかることで症状が出ます。以下の項目が習慣になっている場合、いぼ痔を発症する可能性が高くなります。

  • 立ったまま、座ったままなど長時間の同じ姿勢
  • 便秘によるいきみ
  • 下痢による肛門部への刺激
  • ストレス(便秘や下痢を引き起こすため)
  • 唐辛子のような辛み成分の強い食事
  • 出産時の強いいきみ
  • アルコールの摂り過ぎ

いぼ痔の治療法

いぼ痔の中でも症例の多い「内痔核」の治療法についてくわしくご説明いたします。

脱肛の程度で治療法を判断

脱肛の程度

いぼ痔 脱肛の程度
■ Ⅰ度:脱肛はしていない
【症状】出血や痛み、違和感が主症状です。出血の程度は、トイレットペーパーにつく程度です。
【治療】塗り薬・注入軟膏、座薬、内服薬
■ Ⅱ度:排便時に脱肛するが、自然に戻る
【症状】おしりから何か飛び出てきた!痛みが出てくる。残便感がある。
【治療】ジオン注射を用いた硬化療法、輪ゴム結紮治療
■ Ⅲ度:排便時に脱肛し、手で押し込まないと戻らない
【症状】指で押し込まないと戻らない状態です。運動をしたり、重いものを持ったり、おなかに力を入れたはずみで脱肛することもあります。
【治療】ジオン注射を用いた硬化療法、結紮切除法、左記の2つを組み合わせた併用療法、肛門形成術
■ Ⅳ度:排便時以外にも脱肛している
【症状】いつも外に出たままで、戻らない!下着が汚れたり、肛門のまわりがかぶれてかゆみを起こしたりします。重症度としては最終段階です。
【治療】ジオン注射と結紮切除の併用、手術単独(結紮切除法、肛門形成術など)

おもな治療法

治療の基本は保存療法

内痔核の治療の基本は、生活習慣を改善させていく保存療法になります。保存療法を行っても出血がひどい場合や、脱出によって日常生活に支障をきたす場合は、外来処置やジオン注射、手術を行います。手術を必要とするのは、いぼ痔の患者さんの1~2割程度です。

■ 保存療法
保存療法では、食生活や排便習慣などの生活習慣の改善を行い、痔の症状を悪化させないようにします。そのうえで薬物療法も行います。
■ 薬物療法
外用薬と内服薬を使用します。外用薬(軟膏や座薬)で、痛み・腫れ・出血などを抑え、内服薬(錠剤)で便を柔らかくし、炎症を抑えます。
■ 輪ゴム結紮治療
内痔核を輪ゴムで縛り壊死させる治療法で、外来で治療ができます。ただし輪ゴム結紮療法は麻酔をしないので、痛みを感じない内痔核にのみ行います。
■ ジオン注射(硬化療法)
痔核にジオンという薬剤を注入し、痔核自体を小さくし固めてしまう治療法です。痛みや出血はほとんどなく、注射直後から痔核の脱出はなくなります。すべての痔核に適応できるわけではありませんが、ジオン注射のおかげで、従来は手術(結紮切除術)以外に治療方法がなかった患者様も手術をしないで治療が出来るようになりました。手術と同程度の効果が得られ、再発率も低い方法です。
■ 痔の手術(結紮切除法)
保存療法・薬物療法・ 輪ゴム結紮治療・ジオン注射で治すことが難しいいぼ痔の場合には、日帰り手術で治療します。日帰り手術で対応できない場合は、大きな病院へご紹介いたします。手術が必要となるのは、いぼ痔の患者さんの1~2割程度です。