便秘のお悩みも肛門科へご相談ください

快便は、快食、快眠と並び健康的な生活を支える三原則の一つと言われています。便秘になると、単純に便がでないということだけで終わらず、イライラしたり、憂鬱な気分になったりしますよね。また、便秘を対処せず、繰り返したりすることで、痔や大腸の潰瘍、腹膜炎などさまざまな病気を発症することがあります。早めに適切な対処をしてほしいと思います。

便秘とは

便というのは、皆様が食べた物から体に必要な栄養素が吸収され、その後の残りかすとなります。残りかすが、体の中に溜まっていたら、体調に悪影響が及ぶのも当然です。1日1回、いきまず排便できることが理想的です。一般に便がでない状態を便秘と言いますが、この状態には、人によってさまざま病態が含まれています。

例えば、便が毎日出ないということを「便秘」と思う方もいれば、毎日便が出ていても、便が硬い・便がコロコロしている状態を「便秘」であると想像している方もいます。便秘は、単純に排便の回数だけで判断できる疾患ではありません。ご自身の状態を良く理解して適切な対処を行う必要があります。

便秘の原因

便秘になるメカニズムとしては、便が腸の中を進んで行く中で水分が吸収され少なくなることと関係しています。口から入る食べ物・飲み物の水分は1日約2リットルといわれています。それに、胃腸から分泌される消化液が加わりますので、大腸にはかなり大量の水分が流れ込みます。

快便と便秘と下痢のイメージ

快便と便秘と下痢のイメージ

その水分の大半は、大腸を通過する際に吸収されて、食べ物の残りかすが適度な硬さの塊になります。大腸内での水分吸収量が少し増えるだけでも便が硬くなり、便秘になりやすくなります。要因としては、不規則な食生活、栄養バランスの偏った食事、運動不足やストレスなどが挙げられます。

便秘を改善しないことで生じる弊害

「便秘」を放置していると、大腸の中で便が硬くなり、症状がひどくなり、便秘の悪循環が生じてしまいます。次のような便秘の合併症とも言える弊害が生じてきますので、適切な対処が必要です。

便秘を繰り繰り返す方は、痔になりやすい傾向があります。便秘のために便が硬くなると排便時に肛門を傷付けやすくなります。また、いきみによりいぼ痔も大きくなり、排便時に出血します。肛門の痛みや出血のおそれのために便意をがまんしていると、便がさらに硬くなり、痔の症状はますます悪化してしまいます。

脱肛、直腸粘膜脱

便が硬くて排便時にいきむことで痔核の血管が膨れ、痔核が次第に肛門の外に出てきます(脱肛)。これが繰り返されると、直腸の粘膜も一緒に肛門外へスライドしてきます(直腸粘膜脱)。

糞便塞栓症(ふんべんそくせんしょう)

便が直腸内に溜まって固まり、指や器具でかき出さなければならない状態です。このとき、直腸の粘膜と便のわずかな隙間から液状の便が漏れてきて、下痢と間違われることがあります。

大腸の潰瘍・穿孔、腹膜炎

大腸内に便がとどこおっていると、潰瘍ができたり、まれには穴があいて(穿孔)、そこからおなかの中に便の細菌が広がり、腹膜炎になることがあります。

その他

便秘と肌荒れが関係していることは多くの女性が実感されているのではないかと思います。高齢者の場合、認知症のような症状が便秘のために現れることも少なくありません。これらは、大腸のバリア機能(便中の腐敗物質や細菌などが体内に侵入するのを防ぐ機能)が、便秘のために破綻する結果と考えられます。

肛門科を受診した方が良いケース

便秘症の治療は、生活習慣の改善が基本となります。規則正しい生活を心がけ、生活リズムを整えることで、自律神経が整うため、排便を規則正しく行うことにつながります。また、通常の便秘薬で多くの方はある程度の症状改善が期待できます。しかし、便秘薬が効かない方、思うように症状が改善されない方は、お早めに肛門科などへご相談ください。検査のうえ、適切な治療を行います。

その他にも強い腹痛や吐き気、発熱などを伴うとき、便に血が混ざるときなどは、迷わず医療機関を受診してください。何か別の病気の可能性も考えられます。便秘と思っていたけど、実は大腸がんなどの病気が隠れているとうケース場合もあります。便秘が続くときには大腸の検査が必要となります。

体重減少、血便、貧血のある方、大腸がん検診が推奨される40歳以上の方(がん年齢の方)、血縁者に大腸がんがある方などは特に注意が必要です。ただの便秘だと軽視せず、普段から生活習慣を気を付けたり、定期的な検査を受けて、健康維持に努めてほしいと思っております。