高齢者に発症しやすく、増加傾向にある大腸がん
大腸がんの発生率は増加傾向にあり、がんによる死亡数でも、胃がんを抜いて肺がんに次ぐ2位になりました。女性のがんによる死亡数では、大腸がんはなんと1位です。発症する年齢は、男女問わず50歳代から増え始め、60~70歳代の高齢者に多くみられます。
進行しても症状がなく、あっても痔と間違いやすい
大腸がんは初期の段階では自覚症状がありません。進行すると排便時に出血がありますが、痔によるものと勘違いしてしまうケースが多いです。また盲腸など肛門から離れた部位にがんができた場合は進行しても出血もないため、発見が遅れてしまいがちです。
大腸がんを発見するには、検診が唯一の手段
大腸がんは、自分で症状に気付くのは非常に難しく、見つける手段は検診しかありません。大腸がんは、胃がんに比べると比較的進行が遅く、たとえ進行がんになっても手術できれば高い確率で治癒が見込めます。手遅れになる前に発見するには、定期的な検診が何より大切なのです。
大腸がん増加の原因とは?
大腸がんが増加している原因は、食生活が欧米化(高脂肪・低繊維食)したためと考えられています。昔とくらべて、肉類、卵、乳製品など、動物性脂肪や動物性たんぱく質の摂取が増える一方、腸内の調子をととのえる食物繊維の摂取量が減少しています。
その結果、便が腸内に長い間とどまり、腸内の粘膜と、動物性脂肪や動物性たんぱく質が発生させた発がん性物質が接している時間も長くなってしまうのです。そのため、大腸がんを予防するには、動物性の食品を控え食物繊維を意識して摂取する食生活へと改善していくことが重要です。
といっても、食生活を改善すればすぐに腸内の環境が変わるわけではなく、効果がでるまでにはある程度時間がかかります。食生活を整えるとともに、定期的に検診を受け、大腸がんの早期発見・早期治療を目指しましょう。
便潜血検査で陽性が出たら、大腸内視鏡検査へ
一般的に、大腸がん検診では「便潜血検査(一次検査)」が行われます。この検査は、便の中に血液の成分が混じっていないかを調べるもので、市区町村のがん検診や、企業・健康保険組合による健診などでも広く実施されています。保険診療でも受けることができます。
便潜血検査で「陽性(=要精密検査)」と判定された場合、精密検査(二次検査)として「大腸内視鏡検査」を行うのが一般的です。
大腸内視鏡検査は保険診療に該当し、便潜血検査とは別に自己負担が発生します。大腸内視鏡検査では、腸の中を空っぽにしたうえで、肛門から内視鏡を挿入し、大腸全体を詳しく観察します。
便を提出するだけの簡単な検便検査
便潜血検査とは、目では確認できないような微量の血液が便に混じっているかどうかを調べる検査です。
抗原・抗体反応を利用したスクリーニング法で、別名ヒトヘモグロビン法ともいいます。血液の検出能力は高く、風呂桶1杯に1滴の血液を垂らしただけでも陽性になります。
検査方法は便を提出するだけのいわゆる「検便」で、時間的にも身体的にも負担なく受けられるのが特徴です。
2日分の便をとり、2回検査を行う2日法が一般的
検査の方法には、専用の容器に2日分の便を採取し提出していただき、血液成分が便に混じっていないかを調べます。複数回検査をすればより出血を見逃しにくくなるため、2日法での検査が一般的です。
がんやポリープからの出血を早期に発見できる
大腸にがんやポリープができると、便が通過する際にこすれて、ごくわずかですが出血が見られます。
血便など自覚できる症状が出る前の段階で異変を検知することができるため、重大な病気の早期発見につながります。
検査を受ければ、大腸がんでの死亡率が60~80%も下がる
便潜血検査では、胃や十二指腸からの出血は消化されて人間の血液の抗原性が失われるので、反応しません。
そのため、便潜血検査は大腸がんのスクリーニング検査として使われ、検査を受けるだけで大腸がんでの死亡率が60~80%も下がるという科学的なデータも存在しています。ぜひ、ご受診ください。
便潜血検査の結果についてくわしくご説明します。
結果は、便に血液が混じっていると陽性、混じっていないと陰性となります。2日法の場合、2回の検査のうち1回が陽性、1回が陰性となることもあります。
2回とも陽性(+)が出た場合
2回のうち1回でも陽性(+)が出た場合
「陽性=がん」ではありません
陽性と判定が出ると不安になってしまう方も多いと思いますが「便潜血検査で陽性=大腸がん」と診断されるわけではなく、精密検査を受けて頂きます。精密検査では大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を行い、肛門から内視鏡を挿入して大腸を詳しく調べます。
かくれた痔が原因で陽性が出ることも
実は便潜血検査で陽性が出て内視鏡検査をしても、何の病気も見つからないことが多いです。便潜血検査は肛門からの出血や痔でも陽性になるため、大腸に何の病気も見つからない場合は、潜在的内痔核、いわゆる隠れいぼ痔からの出血と判断します。
痔の方も、陽性が出たら放置せず精密検査を
便潜血検査は痔による出血の場合でも陽性が出ますが、痔だからといって必ず陽性が出るとも限りません。痔を患っていて陽性が出たという方も「痔からの出血」と自己判断せず、必ず精密検査をご受診ください。
2回とも陰性(−)が出た場合
陰性でも、がんの可能性はある
便潜血検査で陽性が出た場合は大腸内視鏡検査が必須となりますが、結果が陰性だったからといって検査を受けなくていいわけではありません。
盲腸など肛門から離れた部位にがんができた場合は進行しても便に血が混じらないので、便潜血反応は陽性になりません。早期のがんではなおさらです。
このように、陰性が出てもがんを患っているケースもあるため、便潜血検査だけで判断せず、40歳代になったら、1度は大腸内視鏡検査を受けましょう。
小さな病変まで見つけることができる
大腸内視鏡検査は、精密検査の名の通り大腸の中をくわしく観察することができ、便潜血検査では反応しないような早期がんも発見できます。
検査で病変が見つかった場合は、生検とよばれる細胞の検査をしたり、ポリープがあればその場で取ることもあります(内視鏡的治療)。
一度受けておくと安心な検査
大腸内視鏡検査は、事前の準備など少し手間がかかる部分もありますが、一度を受けておくと、その後しばらくの間は安心して過ごせます。
検査時の痛みなど、はじめて受診される方はご不安があるかと思いますが、検査中は鎮静剤を使用し、リラックスして受けていただけます。安心してご受診ください。
40歳を超えたら定期的な検査を
大腸がん検診を受ける年齢の目安は、40歳になったらです。40歳を超えると大腸がんを発症する方が増えてくるため、定期的な検査をおすすめします。
便潜血検査は年に1回、大腸内視鏡検査は3年に1回
便潜血検査は、年に1回受けておくと安心です。大腸内視鏡検査は、40歳を超えたら便潜血検査の結果にかかわらず3年に1回のペースで受診をおすすめしています。大腸がん検診(便潜血検査)は、各自治体による助成も受けらることがありますので、ぜひご利用ください。
※便潜血検査(検便検査)は、がん検診以外でも保険適用で受けられます。
ただし、排便時の出血がある方で、医師の診察により「痔ではない」と診断された場合には、まずは大腸内視鏡検査の受診をおすすめしています。出血の原因を正確に調べるためにも、早めの検査が大切です。
大腸がん検診(便潜血検査)の費用
便潜血検査は保険が適用されます。また、市区町村による健診や、職場での検診でも受診できることが多く、それぞれのケースで自己負担額が異なります。詳しくは各自治体のがん検診ホームページや、がん検診窓口へお問合わせください。
世田谷区へお住まいの方へ
世田谷区では、40歳以上の区民の方を対象に大腸がん検診(便潜血検査)の助成を行っております。
- ■ 対象となる方
- 40歳以上の世田谷区民の方
- ■ 検査費用
- 200円
- ■ 検査方法
- 便潜血検査:専用の容器に2日分の便を採取していただき、目には見えない血液成分が便に混じっていないかを調べます。
- ■ 受診方法・お申込みなど
- ・特定健診と同時に大腸がん検診(便潜血検査)を受けられる方は、区への申し込みは不要です。当院窓口へご相談ください。
- ・特定健診等とは別に、大腸がん検診を単独で受診される方は、区へお申込みください。世田谷区がん検診受付センターへお問合せをお願いします。
- ※大腸がん検診で要精密検査(2日のうち1日でも潜血反応陽性)となった場合、大腸内視鏡検査を行います。大腸内視鏡検査は、保険診療となり世田谷区の助成はありません。
大腸がん検診をお考えの方へ
大腸がんは早期なら治ります
検査を受けて万一大腸がんと診断されたとしても、早期であれば90%以上が完治します。肝心なのは、できるだけ早く発見することです。大腸がんは自覚症状がないため、発見するには検診が唯一の方法です!
便潜血検査は、便を提出するだけの簡単な検査ですが、大腸がんによる死亡率を大幅に下げることができる非常に有効な検査です。当院でご受診いただけますので、ご希望の方はぜひお気軽にお問合わせください。