「痔の悪化」暴飲暴食とお酒が原因?

過ごしやすくなり、会食を楽しまれる方が増えていますね。秋から冬にかけては、食事の機会が増えやすい季節です。食欲の秋、忘年会、新年会など、つい「暴飲暴食」や「お酒の飲みすぎ」が続いてしまうという方も多いのではないでしょうか。しかし、このような生活習慣は、痔の悪化を引き起こす大きな要因のひとつです。

痔と生活習慣の深い関係

痔(いぼ痔・切れ痔・痔ろう)は、肛門まわりの血流が滞ったり、粘膜に負担がかかったりすることで発症・悪化します。脂っこい料理や辛いものの食べすぎ、過度なアルコール摂取は、肛門まわりの血管を拡張させ、うっ血(血がたまる状態)を起こしやすくします。その結果、腫れや痛み、出血などの症状が現れます。

さらに、暴飲暴食は胃腸の働きを乱し、便秘や下痢の原因にもなります。便が硬くなると排便時に強くいきむことになり、肛門への圧力が高まります。反対に、下痢が続くと肛門の粘膜が傷つきやすくなります。どちらも痔を悪化させる大きな要因です。

お酒が痔を悪化させる理由

アルコールをたくさんとると、血管が拡張して血流量が増えます。そして、肛門周辺の血流も増えます。しかし、静脈が血液を心臓のほうに送り出す血液量は変わりません。その結果、肛門の血管がうっ血して痔を悪化させてしまうのです。

加えて、飲酒後は水分不足になりやすく、翌日の便秘を招きやすい点にも注意が必要です。お酒を飲む際は、同量以上の水を飲むよう心がけ、翌日も意識して水分を多めに摂ることが大切です。

痔を悪化させないための生活習慣例

痔を予防・改善するためには、日々の生活習慣を見直すことが重要です。

  • 食べ過ぎを控え、野菜中心の食事を意識する
    食物繊維が多い野菜や果物、海藻類を積極的に摂りましょう。腸の動きを整え、便通改善に役立ちます。
  • 辛いものや刺激物は控えめに
    香辛料やアルコール、コーヒーなどは肛門の血流を悪化させることがあります。特に症状があるときは控えるようにしましょう。
  • 規則正しい排便習慣を保つ
    便意を感じたら我慢せずトイレへ行くこと、長時間のいきみを避けることが大切です。
  • 入浴や温かい食事で血行を促す
    冷えも血流悪化の原因となります。ぬるめのお湯にゆっくり浸かることで、肛門の血流が改善しやすくなります。

早めの受診で悪化を防ぐ

肛門科へ痔の症状で受診すると、すぐに何か処置をされると思い込まれている方もいらっしゃるようですが、痔は初期の段階であれば、生活習慣の改善やお薬で症状を和らげることができます。

しかし、痛みや出血が長引く場合、市販薬だけで対応し続けると症状が進行してしまうこともあります。気になる症状がある方は、早めに肛門科を受診し、原因を正確に把握することが大切です。

また、お尻からの出血は必ずしも痔だけが原因とは限りません。大腸ポリープや大腸がんなどの疾患が隠れている場合もあります。健康を守るためには、定期的な胃の内視鏡検査や大腸内視鏡検査も大切です。

肛門科は「恥ずかしい」「行きづらい」と感じる方も多い診療科ですが、一度受診して症状が改善した方は、その後も何かあれば気軽に相談されています。はじめての方も安心してご相談ください。